写真の中の母。 【2014.12.26 Friday 22:50】 |
母「あんた、昨日、来なかったね。 お墓」 私「うん。ごめん。 今年はおじいちゃんの命日もおばあちゃんの 命日も行かなかった。ほんと、ごめん」 母「忙しくやっているんだね」 私「うん。おかげざまでね」 母「気になってることがあるんだけどね。 あんた、時々講座の中で子どもの頃の 話をしてるよね?」 私「してる。 二人姉妹の長女で、家を継ぐように 育てられて、『家を継ぐ』って条件で 愛されていたように思ってたって、 そう言ってる」 母「それ小さい頃からそう思ってたの? お母さん、びっくりしちゃってね」 私「うん、いろいろ考えると、 そう思うんだよ。 ま、今はこうしてまとまって言葉になって いるけど、もちろん子どもの頃は、 こんなふうにはっきり分かってた訳じゃ なくって。 でも、小さい頃から「私が家を継ぐ」って 言うとみんなが喜んだから、 そうなんだって思ってたんだよ」 母「そんなこと思ってたんだね。 お母さんが、そう思わせてしまったんだね。 悪かったね」 私「だめだめ、謝んないでよ。 私も今は充分に分かってる。 誰かが悪いって訳じゃないんだよ。 だって、子どもが家を継ぎたいって言ったら、 喜ぶのって普通だと、今は思うもん。 誰も悪くないけど、 なんか、そういうふうになっちゃったんだね。 そういうふうになっちゃうのが、 家族なんだと思うよ」 母「上から見ててね、 あんたがその話をするたびに、 ちくっと胸が痛かったよ。 そして、いつか絶対に言おうと思ってた。 あんたは大事な私の子どもだよ。 家とか、勉強とかスポーツとか、 性格がいいとか悪いとか、 手伝いするとかしないとか、 そういうことじゃなかったんだよ。 あんたは私の大切な大切な子どもなんだよ」 私「あ〜お母さん、そうだよね、そうだよね。 それなのに、講座なんかで、 その話しちゃって、ごめんね。 お母さん、嫌だったよね? ごめんね」 母「謝らなくっていいよ。 お互い、謝るのは、よそう。 もうあんたは分かっていると思うけど、 ほんとのところをちゃんと分かっててほしい、 お母さんはそう思うよ」 昨日12月25日は母の命日。 小さな頃の写真を見ながら、妄想した。 生きていれば今年喜寿の母と、 温泉にでもいって、 おいしいものを食べて、 いっぱい話をしたかったな。 まだ若い母が、 商売をやっている家の長男と結婚をして、 いろいろ大変な思いをしただろうな。 男の子を生むことを期待されたか、 あるいは、自身に課したかして、 でも私は女で、妹も女で、 辛い思いもしたんだろうな。 朝暗いうちに起きて、 夜遅くまで立ちっぱなしだったと思う。 ご飯を食べているときに、 お店にお客さんがくれば、 「いらっしゃませ」と 笑顔で駆け出していった。 朝昼晩、家族の分と 一緒に住んでいた若い衆のごはん、 全部作ってた。 文化服装学院を出た母は、 ファッションが大好きで、 それなのに、それとは一切関係のない仕事で 必死に働いていたんだよな。 お母さん、よくがんばれたね。 逃げ出したくなったこと、なかったの? どうやって息抜きしてた? 私「ねえ、みてこの写真。 お母さん、サングラス、かっこいいね。 たかこは、きっと何か拗ねてるね」 どの写真も、母は笑顔で、 私や妹がそこにいることが、 幸せで幸せで仕方ないような、 そんな写真ばかりだ。 父の無骨な指に ガシっと抱えられた私。 寄り添う母。 もし、人生をやり直せるとしても、 この両親の元に生まれたい。 。 そんなことを 喜寿の母と 話したかった。 |
author : tanizawa-k
|
| 日常 | comments(0) |
|