ご褒美を感じる力。 【2012.09.26 Wednesday 19:24】 |
NHKの朝の連ドラ「梅ちゃん先生」。 主人公梅子が医者をめざす元になった少年ひろし君が、 ここのところ青年になって登場している。 その彼は何かに取り付かれたように働いていて、 ついに梅子のところで倒れてしまうのだが、 倒れる前に 「梅子さんはうそつきだ」と言う、 目を覚ましたひろし君に、 梅子はその言葉の意味をたずねると、 幼い頃梅子から言ってもらった 「一生懸命にがんばっていると、 それはいつか報われる。 神様がご褒美をくれる」 というような言葉を信じてきた彼だが、 「ちっともご褒美なんてない。 だからうそつきだ」 と言うのだ。 幼い頃、 両親を戦争で亡くしていたひろし君は、 病気を梅子の父親に治してもらい、 元気になったあと、 親戚の家にもらわれていくのだ。 材木問屋を営んでいた親戚の家では、 きつい仕事でこき使われる。 それでも、彼は梅子の言葉を信じてがんばって働いた。 その後、定時制の高校を卒業し、 大学で学び卒業し、 医薬品の会社に就職し、 営業として必死に働いている。 しかし、小さな医薬品の会社は なかなか医者に認めてもらえず、 働いても働いても結果は出ない。 会社からは嫌みを言われる。 がんばってきても、 ちっともいいことない! と彼は言うんだ。 私はそのシーンを見ながら、 何年か前に関わった中学3年生の女子のことを思い出していた。 彼女はこのブログを読んでくれていた。 ある日、私は、 重い病の友人の、お見舞いにいった時のことを書いた。 彼はもうすぐ命がなくなることを自分でも知っていた。 そして私を見て、 「会えて、幸せ」と言い、 その後、水を一口ふくんで、 「お水が冷たくて、幸せ」と言った、 そのことを書いた。 その中学3年の女子は、 次に会ったとき、 「先生、私、いいことなんてひとつもないと思ってたけど、 そんなことないと思った。 お水を飲んで幸せと思う人もいるのに。 いいことなんてひとつもないなんて考えは、 違うと思った」 というような感想を教えてくれたんだ。 彼女は、 心のエネルギーが枯渇しそうなほど苦しんでいた頃から、 回復しつつある時期で、 祖母と母と姉との暮らしの中でのイライラを 言葉で表現できるようになっていた頃だった。 つまり、 お金とか、 環境とか、 社会的な背景がどうとかではなく、 時には後どれくらい生きられるかにも関係なく、 心がある程度満たされていれば、 そうでない時はとってもご褒美になんか思えないことも、 そう感じられるんだと思う。 梅子の夫、のぶの工場に、 地方から働き手として東京に出された男の子がいる。 彼は、多分貧しい暮らしの中で、 たくさんの兄弟を支えるために、 中学卒業後、東京に出てきた。 それでも、彼は、 すごく幸せそうだ。 祖父からの教えを たとえば 「急がば回れ」とかを 大切にしながら、 働ける喜びを感じて生きている。 定時制にいくことができるようになったが、 それは、みんなが骨折ってくれての出来事。 それを彼はご褒美だと感じている。 ひろし君が、 定時制に行けたことも、 その後大学に入学できたことも、 そこを卒業できたことも、 就職を果たしたことも、 ご褒美に思えなかったのは、 それほどのことがあったからだと思うけど、 それでも、少し心にエネルギーが注入できたら、 そのことを「ご褒美」という視点で 考えられるといいな。 |
author : tanizawa-k
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