「キリマンジャロの雪」 【2012.07.31 Tuesday 22:42】 |
「キリマンジャロの雪」というフランス映画を見た。 労働組合の委員長ミッシェルは、 会社からリストラを余儀なくされて、 対象者20名をくじで選ぶことにする。 権限で自分をくじから外すことが可能なのに、 自分の名前を書いた紙もくじの中にいれ、 自らひき、退職する。 「公平でありたい」と考えたミッシェルの選択を ヘルパーさんとして働く妻も理解する。 そんなある日強盗におそわれ、 結婚30周年をお祝いしてプレゼントされた キリマンジャロへの旅行券と現金を 盗まれてしまった。 そしてその犯人は、ミッシェルと一緒に働いていて、 くじで当ててしまってリストラされた若者、 クリストフだった。 彼は父親の違う弟2人の面倒を見ていた。 面会したミッシェルはクリストフに 早期退職者でのんきに暮らしていると責められ、 「職を失って暮らせるか? 新入りだったから解雇手当もない」 「(公平のつもりかもしれないけど) まず金持ちや共働きから解雇、 給料や労働時間も減らす (という方法を思いつかなかったのか)。 その方が汚い妥協よりましだ」 と言われ、 仲間それぞれの家庭の事情を考えずに行った、 くじが実は「公正」ではなかったと省みる。 そして、クリストフの弟二人の 面倒をみることにする。 ミッシェルは35年間、労組の委員長として 活動してきた。 「グローバル経済や経営者を責めるのは 簡単だ。でも 勇気とは自らの人生を 理解し、明確さを与え、深化させ確立し 社会と調和することだ」 と妻に、 ジョレス(社会主義者・政治家)の言葉を 紹介する場面がある。 活動の目的や自らの経験や信念のようなものに 固執することをせず、 「社会と調和する」という「調和」を 大切にすることがすばらしいと思った。 自分を正当化する前に相手を知ろうと する姿勢、それが本当にかっこいい。 しかも、そも相手は、 家族や仲間たちから送られた 大事なプレゼント奪った相手なのに、 しかも、労働組合の闘争の歴史も、 戦ってきたからこそ労働者の権利を ひとつひとつ勝ち得てきたことも、 ろくに知らない相手なのに。 それなのに、彼の言葉に耳を傾け、 受け止め、考えるミッシェル。 またこのミッシェルの妻が自立している。 娘にパートナーの浮気を相談されて、 彼女は 「どうしたいかはあなたが決めるしかない」 と応える。 そして、ママのように自分の人生を犠牲に しろっていうの?とトンチンカンな質問を する娘に、 「看護学校をあきらめたこと? それは自分で選んだ道よ。私だけの道。 自分で辞めたの。 昔も今も自分の人生が好き。 パパやおまえたちがいたから、 私が望んでいた世界だったもの」 と言う。 お互いを尊重していて、 自立した存在同士であるミッシェルと妻は、 お酒を飲みながら、 二人は周りからどういうふうに見えるか なんて話をする。妻は 「二人をみてこう思うかも。 幸せそう。今まで誰も傷つけてこなかった からだわ。人を世話してきたからこそ、 幸せそう。そう見えるかも」 そう言う。 いいなあ。 そしてそういう二人が出した結論は、 クリストフの弟たちを、 彼が刑期を終えるまで 育てるということ。 会社のことや社会全体のことや、労働者の 人としての権利のことを考えてきた彼らが、 そういう大きなことにだけ捕われずに、 目の前にいる困っていると思われる人に 手を差し伸べる二人が、 まぶしいと思う。 幸せとは 最初は「もらう」幸せ、 次は自分で「できる」幸せ、 さらに「してあげる」幸せ。 これは イエローハットの鍵山さんの言葉だけど、 「してあげる」幸せを知っている二人は、 豊かなんだと思う。 この映画が私にとってとても良かったのは、 以下の3つ点から。 ①最近、労働組合の活動ってことに関して考える 機会があったことで、 だからこそ、 労働組合の同志たちの間の格差の重みを、 なんとなく理解することができた ②自分の意見、考えに固執するのではなく、 相手の意見や考えを知ろうとして、 自分の方法にこだわるより、 最良の方法を考えようとする姿勢のお手本。 ③尊敬しあい、生き方を認め合う 夫婦の姿を見ることができた。 6月〜7月は なんだかばたばたして 映画をあまり見られなかった。 その中の一本が、 こんなに素敵な映画だったことが、 うれしいなあ。 |
author : tanizawa-k
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