重荷を下ろす。 【2012.03.31 Saturday 16:37】 |
3月31日は父の命日。 昨日お墓参りにいってきた。 もう何年も前のことだ。 お寺のお上人様に、本堂で、 「この鞄をもってみてください」 と言われたことがある。 持ち上げると結構重かった。 石を入れてあるとのことだった。 その後元あったところで置くように指示された。 私は置いた。すると、 「重い荷物を背負って歩くのはしんどいですよ。 もう下ろしていいですよ」 と言ってくださった。 昨日、お墓を磨き、 草を取り、 お花を供え、 お水をかけて、 時間をかけてお墓参りしながら、 父と母に心の中で、 その話をした。 私は二人姉妹の長女に生まれたのに、 名字を継がなかった。 実家は会社を経営していたのに、 父が亡くなった時点で継続せず、 廃業した。 そのことで、 時々は自分を責め、 時々は仕方なかったと受け入れ、 時々は、だからこそ今があると 納得させてきた。 それらは長い間、 交互にやってきていた。 お上人様がその話をしてくれた時は、 まだまだとってもそんな気持ちでは なかったけれど、 昨日初めてお墓で、 父と母にその話をしながら、 「下ろしていいかなあ」 と思った。 今日は朝から春の嵐。 毎年3月31日は、 お墓参り以外に外出はせず、 静かに過ごしていたけれど、 今日は春の嵐の中、 映画を見に行った。 「ヘルプ〜心がつなぐストーリー」 シートに座った時、 「3月31日に、こういうこと、 できるんだなあ」 としみじみと思った。 時ってのは、すごいチカラを持っている。 父が亡くなって15年。 こういう日が、私にきた。 映画は人種差別を背景にした物語。 白人の家庭で働く通いのメイドは「ヘルプ」と 呼ばれたらしい。 彼女たちが尊厳を取り戻すために、 勇気を振り絞って立ち上がった過程は なみだ涙。 ヘルプの一人、エイビリーンは子育て上手。 エリザベスの家庭で働いている。 エリザベスは子どもの世話はほとんどせず、 家に友達を呼んでカードをしたり、 その時に着るドレスを縫うことで忙しい。 子どもを一日に一回しか抱っこしないし、 おむつも変えない。 エイビリーンがおむつを変えて帰宅し、 翌朝みると、そのままの状態になっている。 エイビリーンが着替えさせ、髪を整え、 食べさせ、トイレの躾をする。 何よりも、何よりも、すごくすごくいいのが、 しょっちゅう、子どもに語りかけるのだ。 「お嬢様は、かわいい。 お嬢様は、かしこい。 お嬢様は、大切な子」 そして、子どもにリピートさせる。 エイビリーンは人間にとって一番大切なものが 何か知っていたんだ。 それは自尊心。 それを、小さな子どもに、育もうとしていた。 だから、ママに起こられて泣きじゃくっている 子どもを抱きしめて、 「お嬢様は、かわいい。 お嬢様は、かしこい。 お嬢様は、大切な子」 と言い、彼女にも繰り返させる。 エイビリーンは、白人の子どもに、 自尊心を育んでいたけれど、 自分自身は、 自分自身の中にある自尊心そのままには 生きていなかった。 でも、最後、 彼女は、それを選ぶ。 その選択が気持ちいい。 でね、 私だってそうだ!って思った。 私の中には、 父や母、祖父母や、おじさんおばさん、 そして実家で働いてくれていたたくさんの 方々によって、 自尊心の種をいっぱいもらってある。 かわいいね。 かしこいね。 そうたくさん言われて育ってきた。 なのに、 いろいろなことがあって、 特に「家」とか「家業」とか、 そういうことになると、 時々は、その自尊心を どこかにおいてきていたこともある。 でも、もうそんなこと、 しなくていいんだ。 もう、自分のこと、責めなくていいんだ。 その時その時精一杯考えてしたことだもん。 その選択を、ちっとも卑下しなくていい。 私は重荷を下ろしていいし、 自尊心を減らさなくて、いい。 そういうこと考えて、 すっきりしている3月31日。 辛いことも苦しいこともあるけれど、 生きていると、 こういうパっと開けたような一日もあるんだなあ。 |
author : tanizawa-k
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