失ったものに、足元すくわれちゃいそうな時。 【2009.11.30 Monday 15:39】 |
ここのところ、年を重ねていくことについて、 しみじみと考える機会が多い。 たとえば我が家の犬のバーニーは この12月15日で生まれて10年になるが、 人間でいえば60歳くらいらしい。 寒くなってくると、 私のベットに乗ってきて寝るのだが、 先日、夜中にキュルキュル言っているので 何かと起きれば、飛び上がれなくて困っていた。 散歩にいっても、夏までとはちょっと変わってしまった。 彼も自分の年齢とどうつきあっていくか、 今バランスをとっているんだと思う。 夫の母も、ここのところ急激に 忘れやすくなっている自分に、 すごく不安を感じているようで、 ずっと飲んでいる薬を処方してもらうのを 忘れてしまった日の夜には、 自分の頭を軽くコツコツたたいていた。 私がその日の朝に、「今日は薬の日ですね」と 一言言えば、そんな想いはさせなかったのにと 思うと申し訳ないし、 すごくせつなくなる。 私は49歳。 もう白髪は一ヶ月に一度染めないと、 自信をもって人前にたてないような状況だ。 乾燥が激しくて、お風呂の後でたっぷりクリームを ぬってあげないと、かゆくてたまらなくなる。 かかとは手入れをさぼるとすぐにガサガサになる。 からだはどんどん硬くなり、 脳の回路のつなぎっぷりも、ゆっくりになっていると思う。 本を読んですごく感動しても、 感想を書こうとするときには、 どこに感動したか忘れていることもある。 土日の研修は 人としてのあり方の深いところを考えるもので、 内容を書く事はできないが、 ワークの中で、自分のからだのことや 年齢とどうやってつき合っていくかを 考える部分があった。 私は自分のからだのことを、隅から隅まで考えて、 そんなことをしたのは初めてだと気づいた。 そうやって意識すると、 私のからだは、いろいろな記憶をもっている。 私は小さいころ、 よくおねしょをした。 両親ともの祖父母にとって初孫だった私は、 両方の祖父母に心配をしてもらった。 鳥を飼うとおねしょが治るとどこからか聴いてきた 母方の祖父は鳥かごともにプレゼントしてくれた。 父の友だちとスキー旅行にいったとき、 ホテルでおねしょをした私の始末を 照れくさそうにしてくれた父のことも はっきりと覚えている。 小学校の運動場で、金網に足をぶつけて、 くぎが腿にささってしまった。 忙しい母に代わり、なぜか妹が病院についていってくれて、 けがを縫うところを、じっとみていた彼女は、 医者や看護士さんにびっくりされていた。 視力はすごくよくて、 学生時代山の手線のホームで、 向こう側のホームの小さなな文字を読んで、 友だちをびっくりさせた。 30代の半ば、 私は約2年間に渡り不妊治療をしたが、 そのときの苦しかった時間を思い出した。 卵管に水や空気を通す治療は、 気が遠くなるほど痛くて、 そのあとは腰を曲げたままでなければ歩けなかった。 ホルモンの注射は私の背中に吹き出物をたくさん作り、 お風呂に入ったあと、自分の背中を見るのが、 すっごく辛かった。 土曜日の夜に見舞った友人のパートナーが、 帰りがけに、小さな声で「ありがと」と二回言ってくれた。 そしてかすかに腕をあげて「ハグ」と言ってくれた。 彼の胸に顔を寄せると、 彼は力のない腕で、でもかすかに力をいれてくれて、 私の肩をだいてくれた。 私の肩は、彼の細くなった腕をはっきりと感じた。 私のからだの、 どの部分も、私と一緒に生きてきた。 幼い頃の遠い記憶も、 ついさっきの記憶も、 私のからだは私の中に刻んでいる。 そうやって生きてきたこれまでと同じように、 私は、これからも生きていくんだと思った。 そう思うと、 なさけない思いを経験させてくれた膀胱や、 辛さを味あわせてくれた卵管や、 ぱっちりはしていないけど、 しっかりと働いてきたくれた目が、 なんだか愛しくて愛しくて。 バーニーや夫の母親が、 自分のペースで老いを受けとめていく隣で、 私も私なりに、 自分の年とつき合っていけたらなあと思うのだ。 映画「理想の彼氏」は40歳で離婚し、 自分のキャリアをスタートさせた女性 (キャサリン・ゼタ・ジョーンズが演じてる)が、 25歳の青年と恋におちる映画だった。 年齢の違いにとまどいながらも恋愛を深める二人だが、 彼女の方が、彼と対等になれない自分を感じて 別れを切り出す。 すばらしい仕事も、美貌も、スタイルも、 かわいい子どもたちも、セレブな仕事仲間も、 なんでももっている彼女だが、 「若さ」は過去のものになっている。 彼女は、今ここにもっているたくさんのものより、 たったひとつないこと「若さ」だけに とらわれてしまって別れを決めるのだ。 それはすごくよく分かる。 なんてたって、これからの人生の長さだって、 きっと違うのだもの。 納得いかない彼だったけど、 彼は彼なりの時間をすごして、 5年後、再会する。 そして、やっぱり二人はパートナーなんだと 確信する。 私も、 失った体力や、もどってこない記憶力や、 しなやかさ(もともとあったかどうかは疑問!)など、 今手にできていないもののみに、 視点がいくことがある。 それらがないことは事実だけど、 そのことだけにとらわれるのは、いやだと思う。 事実は受け止めて、 でも、 今ある自分の、 私の歴史のつまったからだを大切にしながら、 その時その時、やるべきことや、やったほうがいいことを やっていきたい。 そして、時々、がんばってきた自分に、 優しい時間をあげようと思うよ。 失ったものに、 足をすくわれちゃいそうになった時ほど、 自分に優しくしてあげたいなと思うんだ。 |
author : tanizawa-k
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