「空白」と「色彩」。 | 今のところではありますが…
<< 重心調整。 | main | 「分ける」考え方ではなく。 >>
「空白」と「色彩」。

【2013.04.16 Tuesday 09:20
 二冊の本を読んだ。
「空白を満たしなさい」
「色彩を持たない多崎つくると、
 彼の巡礼の年」

「空白〜」は、
自死を選んだ主人公が生き返り、
自分の死因が「自死」であるということが
受け入れられず、
かといって何が起こったか記憶がなくて、
その空白の時間を埋める物語。

「色彩を持たない〜」は、
学生時代に、理由も分からないまま
関係を断たれてしまった仲間たちに会いにいき、
自死さえも考えたその理不尽な体験の意味を
確認していく物語。

同じ時期に、
主人公が、
過去を取り戻そうとする、
そんな小説を読んだ。

「空白〜」で、
主人公は自分の自死の意味を解明した。
嫌悪していたある人の存在が許せなくて、
でも、その人の言葉に影響を受けている自分がいる。
その自分が消えてなくなってしまえばいいと思って、
自分を丸ごと消してしまうことを選び、
そのことが自死に繋がったと分かる。
もし、嫌悪する存在から影響を受けているのは
自分の一部で、
他の、愛する妻や息子のために
生きたいと願っていた自分や、
周りの愛する人たちと
一緒にいたいという自分を足場に
しっかり生きながら、
そのたった一部の、
嫌悪する存在に影響を受けている自分を
消してしまえばよいと考えることができたら。
解明した今では、彼はそう思う。


こんなふうに、
どうしても乗り越えたい過去のいやな経験がある時に、
その時に自分のとった行動は、
多分それしか方法がなくて、あるいは分からなくて
そうしたと思うけれど、
もし、今同じことが起きたとしたら、
どういう行動を選ぶかということを、
自分の中に明確にできた時、
ある程度、そのいやな経験を
乗リ超えることができる。

彼はこれをやり遂げたんだなあ。



「色彩〜」では、
なぜ理不尽な仕打ちがあったのか、
その対象がなぜ自分だったのか、
主人公は明確にした。
仲間の一人が精神的にバランスがとれない時で、
仲間の中にいると感情をマネージメントすることを、
絶え間なくやっていかねばならない、その状況に
耐えられなくて、
だからいっそのこと、
この仲間そのものを壊してしまいたいと考えたんだ。
その時に、一人だけ故郷から離れていた自分、
そして多分、そういう状況でも
うまく生き残っていきそうな自分を
背教者に仕立てたんだと、
彼は分かる。

そういうことが分かった後、
彼は、
愛する女性のことを、本当に心から求めた。
「心から誰かを求められるというのは、
 なんて素晴らしいことだろう。・・・
 もちろん全てが素晴らしいわけではない。
 同時に胸の痛みがあり、息苦しさがある。
 恐れがあり、暗い揺れ戻しがある。
 しかしそのようなきつさでさえ、
 今は愛しさの大事な一部となっている」

この感じがとっても分かるし、
こういう気持ちを取り戻せたこと、
ほんとよかったと思う。


「空白〜」では、
全てが明らかになった後、
生き返った人たちがまた亡くなっていくことを知る。
それが分かってからの主人公がまた、
読者に今した方がいいことのヒントをくれている。
彼は、
大事にしたい人を、今大事にしようとする、
いつか会いたいと思ってた人に会いにいく。
愛する妻は実の母親と関係が悪い。
そのことを解決させてあげたいと思っていた。
それをいつかではなく、すぐやる。


「色彩〜」では、
読者の私たちに寄り添う言葉をくれている。

自然の脅威を思い知らされ、
反原発の進みはあまりにゆっくりで、
テロは思ってもみない場で起きる
この社会を生きている私たちに、
以下のように示してくれたのだ。

「人の心と人の心は調和だけで結びついている
 わけではない。それはむしろ傷と傷によって
 深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、
 危さと危さによって繋がっているのだ。
 悲痛な叫びを含まない静けさはなく、
 血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を
 通り抜けない受容はない。それが真の調和の
 根底にあるものなのだ」

それでも、生きていく私たちに、
これ以上のエールってあるだろうか。


アサーティブのヨーロッパのトレーナーの第一人者
アン・ディクソンさんは、
先週土日の研修の中で、
本当に堂々と、
「人は、悲しみの中でも生きていける」
ときっぱりと言ってくれた。

アンさんの言葉とこの2人の主人公の
プロセスは重なる。

空白を埋めようとしたり、
色彩を取り戻そうとしたり、
それは勇気が必要なことだけど、
でも、それしか
明日も生きていくためにできることはなくて、
苦しくて苦しくて身悶えしながらも、
そうやってなんとか
今日の命を生きていく2人の主人公と、
一緒に過去への旅をした気分。

あ〜小説に浸った!












author : tanizawa-k
| | comments(0) |

スポンサーサイト

【2017.05.19 Friday 09:20
author : スポンサードリンク
| - | - |

この記事に関するコメント
コメントする










谷澤 久美子
counselor