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「ハピネス」

【2013.03.25 Monday 16:10
桐野 夏生
光文社
¥ 1,575
(2013-02-07)

桐野夏生著「ハピネス」読み終わる。

東京の埋め立て地の高層タワーマンションに住む
有紗が主人公。
同じマンションに住む、
同じくらいの子どもがいるママたちとの集まりに、
いろいろな思いを抱く彼女。

経済力のある夫を持って、
洗練されたおしゃれをして、
お互いを「○○(子どもの名前)ママ」と呼び合い、
子どもが小さいうちは仕事はせず、
どこの幼稚園に入るかに必死になる・・・
というママとしてのスタイルを生きるママたち。
そこから
外れることを恐れる有紗。

そこから外れることを恐れるけれど、
実はすでにちょっとずつ外れていることを、
自覚している有紗。

何しろ、他のママたちは、
ベイタワーウエストというハイクラスな方のマンションの、
分譲住宅住まいだけど、
有紗はイーストの方で賃貸だ。

自分ともうひとり、
近に住む美雨ママは、
実は公園要員で、
美雨ママは、モデルのようなスタイルでかっこいいので、
子連れの集まりに招かれる。
しかし、
ウエストに住んでいる「いぶママ」「めいママ」「まこママ」は、
自分たちがいないところで、おしゃれなレストランでランチしたり
家族ぐるみで出かけたりもしているらしい。

うらやましく思ったり、あこがれたり、
意地悪な気持ちになったり、
孤独を感じたり、
有紗の感情は揺れ動く。

夫はアメリカに単身で住んでいる。
有紗は子どもと2人の生活の中で、
すっかりだらしない生活となっているのだが、
「だらしない」と近所の人から評価されることは、
恐ろしい。

気後れしながらママ友たちのグル−プに
しがみついている有紗は滑稽だけど、
同じようなことは、
私の活動場所のひとつ中学校でもおきていて、
客観的にみれば、
早く抜け出てしまえばいいのに、
その方が楽なのに・・・
と思うが、
一度踏み入れてしまうと、
その中でがんじがらめになってしまって、
身動きとれないんだよなあ。

同調圧力が強くかかっている中での
生きづらさ。
誰も、それを表立って強要している訳でないけれど、
相互の作用でそうなってしまう。

かといってそれに入っているからこそのサポートを
受けられることもあり、
そんな時だけはほっとする。

そんな彼女が、
公園要員のもう一人、
美雨ママと仲良くなることにより、
彼女がこのグル−プにしがみついているだけではなく、
他の世界ももち、自由に生きていることを知る。

彼女と話すようになっていきながら、
有紗は変わっていく。

そして、
考えや感情は揺れなながらも、、
ママ友のグループが望ましいと考えている
ライフスタイルから一歩ぬけだし、
外からの評価だけで自分の生きる道を決めるのではなく、
自分で考えて、自分の明日を選び始める有紗。
ぐらぐらしつつ、進み始める。

そのことを桐野さんは
「隘路でも道は道なのだった」
と表現している。

隘路とは、狭くて通るのが困難な道のこと。
困難であっても道はあるなら進むことが可能なのだ。

私は、
この小説を読んでいて、
同調圧力に揺れながらも、
自分で選択して生きるようになるための根本には、
「自己信頼」がどうしても必要だと確認をした。

有紗は、
ウソで固めていたことをそのままにしておく限り、
きっと自己信頼へのステップは踏めなかった。
解決しなければならない問題に目をつぶり、
先送りばかりしていたら、
自己信頼から遠ざかるばかりだったと思う。
しかし、
美雨ママによって、過去をほどいていって、
会いたい人に会いにいき、
飲みたい時に飲みにいくというような行動を
起こし始め、
問題解決にむかって、手紙を書くこともした。

そうやっていくうちに少しずつたまってきた「自己信頼」。
そうなってくると、自覚ができる。
もっと自分のことを大切に扱おうという自覚。
積極的に自分を大切にし始めたのだ。

どう思われるかという評価を大切にするのではなく、
どうしたいか、
どう考えているか、
どう感じているかという
自分自身のことを。

そういうひとつひとつのことが積み重なり、
ついに彼女は大きなことを決断をし、
自分と夫と子どもと幸せに生きていくという
目標にむかて、
目の前にある必要があることをやり始める。


それでも、
「仲良く生きていくのって、
 なんて難しいんだろう」
と有紗は思う。

それでいいんだと思う。

これで100%OKってことはなく、
隘路でも、
進める道があれば進むことなんだよなあ。



桐野夏生氏の小説の登場人物の中には、
「これでもか」というきたない考えの人が出てくるのが常だが、
今回は今までほど痛い人は出てこない。

その分、リアルだ。
リアルなだけに怖くて、
そして読後はすがすがしい。






author : tanizawa-k
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【2019.12.15 Sunday 16:10
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谷澤 久美子
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