「しあわせの隠れ場所」 | 今のところではありますが…
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「しあわせの隠れ場所」

【2010.04.05 Monday 09:28
「しあわせの隠れ場所」は、
父は行方不明で母はコカイン中毒という家庭に生まれ、
ひとりぼっちで、寝るところもないという
ホームレスの黒人の少年が、
ある家族と出会い、
自分の才能を開花させ、
ついにはプロのアメフトの選手になるという実話。

この家族のママ、サンドラ・ブロック演じるリー・アンの
「ほっとけない」という気持ちが、
気持ちいいし、
さわやかだ。

私はこの映画の中で3つ、
考えたことがある。

1つは、
私の中に
ビジネスで成功していて
+熱心な共和党支持者
+全米ライフル協会の会員
ってことに、
レッテルはりをしていた部分があるってことに
気がついた点だ。
この3つの要素を持っている人の
一番大切なことは選択する自由やそれに伴う責任で、
当然強いものの味方だし、
環境や背景の中から生まれる
人のどうしようもない弱さについても
自己責任を強いるような、
そんなイメージをもっていたのだ。

映画の中で、リー・アンが時々ランチらしきものを楽しむ、
セレブ仲間の女性たち3人がいるが、
彼女たちは、その典型のように描かれている。
マイケル・オアーを引き取り、
ついには後見人になるという選択をしたとき、
「娘がいるのに、平気なの?」とか、
「それって偽善では?」とか、
そんな質問をリー・アンにぶつける。
しかしそれにも全然堪えない彼女に対し、
ちょっとだけ敬意をあらわすように
「あなたが彼の人生を変えたのね」なんて言うと、
すかさず彼女は言い返す。
「彼が私の人生をかえているのよ」って。


つまり、どういう主義主張をもっていても、
だからって「コレ」っていうレッテルは
世の中に不要だ。
結局は「人」なんだなあ。
つくづく、自分の浅さを
思い知らされる。



考えた2つめは、
どんな人生にも、結局葛藤の時期はあるが、
それが全く意外なところできたな・・・ってこと。
順風満帆なんてありえないと分かっているから、
映画見ていても、それを期待する。
それが、さすがアメリカで、
リー・アンやマイケルにとって初めての大きな葛藤は、
「全米大学体育協会」という、
何するの?そこ・・・的なところでの調査がきっかけに
なっていることが、めっちゃ驚きだった。
この協会が彼に課したことのひとつは成績。
いくら優秀な選手であっても、学業成績が
協会が定めたものに達していないと、
大学でプレイすることは許されないのだ。

それだけではない。彼の場合、問題になったのは、
ミシシッピー大を大の贔屓にしているリー・アン家族
だからこそ、彼らから受けたいろいろな恩が、
大学関係者からのいわゆる賄賂に値しないかどうか、
調査をされるというシーン。

調査官はマイケルに、
「あなたの後見人たちは、
 あなたをミシシッピー大にいれたくて、
 あなたを育てたのではないか?」と質問する。
その質問を得て、初めてかれは疑問を抱くのだ。
「なぜ、この一家は自分に対しこれだけのことを
 してくれたのか?」

ま、結局、お互い、そこで考え合うことで、
信頼も愛情も絆も、より太くなりより深くなるが、
とにかく、そこでか!ってところが、
私にとってはおもしろかった。


3つめは「はなのすきなうし」についてだ。
マイケルは、厳しい家庭環境に生まれたから、
自分の部屋はもちろん、自分のベットさえなかった。
そして、ママに絵本を読み聴かせして眠った経験もない。
リー・アンは、下の息子と一緒にマイケルに読み聴かせをする。
その絵本が「はなのすきなうし」という絵本。

映画を見ている間中、
私はこの絵本が気になって仕方なく、
結局本屋さんで手に入れた。

ずばらしい絵本だった。

スペインの牛の物語。
フェルジナンドはコルクの木の下で、
一人静かに花の匂いをかいでいるのが好き。
他の牛は、闘牛場で活躍する牛をめざしているが、
フェルジナンドにとって、そんなことは論外。
ある日闘牛に出す牛を探しにきた男たちの目の前で、
蜂の上に座ろうとしたフェルジナンドは大暴れ。
男たちはからだが大きくて、さらに凶暴だと勘違いし、
彼を連れていく。
しかし、いざ本番となっても、フェルジナンドは
闘牛を見にきてた女性たちの帽子についた花の香り
をかぐだけ。
もとの野原に戻されたフェルジナンドは、
コルクの木の下で幸せに暮らした。

私はこの絵本を知ったことが、
この映画の一番の収穫だったと思う。

周りから期待される人間像や、
社会が優秀だと決めている力をもとうと、
自分らしさをおさえたり、消したりして
がんばっている私たちへのエールの絵本だと思う。


はなが好きな牛がいていいし、
友だちと一緒にいるより、
一人で本を読むことが好きな小学生がいていいし、
勉強はいやだけど、掃除は一生懸命になれる中学生も、
高校卒業してみんながいくから
大学や専門学校に行くのではなく、大工さんをめざしたり、
料理人を目指す人もかっこいい。

みんながみんな、
効率よく利益をあげる人にならなくていいし、
みんながみんな、
プレゼンテーション能力が高くなくてもいい。
牛の中に、
花がが好きな牛がいていいってのは、
今だから必要な寓話だと思う。

とはいえ、この絵本は1936年に出版されたらしい。

ほ〜、そうなのかあ〜
その時代も、その時代の、
「こうするべき」や「こうあるべき」が
あったんだなあ。


評価:
マンロー・リーフ
岩波書店
¥ 672
(1954-01)

author : tanizawa-k
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【2019.12.15 Sunday 09:28
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