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小説三昧プラスα

【2020.03.30 Monday 09:04

「ライオンのおやつ」

大きな病があり、

人生の最後をホスピスで過ごす主人公。

このホスピスは毎週日曜に「おやつの時間」があり、

入所者のリクエストで、おやつがふるまわれる。

主人公は、最後に食べたいおやつって何だう?と考える。

 

自分だったら何をリクエストしようか?

この小説を読みながら

誰もが考えたと思う。

 

私は、まだまだ迷い中。

おばあちゃんが作ってくれたおはぎか、

父が山梨から買ってきてくれたころ柿か、

母の得意だった牛乳カン(牛乳で作った寒天)か、

夫と食べ歩いた中津川のいろんなお店の栗きんとんか、

そうか、栗なら、

まだ未体験の「モンブランスタイル」の

 モンブランもいいな。

 

そして

父が最後に食べたいおやつって、

なんだったんだろう?と考える。

 

明日3月31日は

父親の命日。
なくなってから23年たつ。

父のことで知らないことが

いっぱいある。

聴きたかったことがいっぱいあるし、

食べてもらいたかったもの、

いっぱいある。

 

 

3月に入って、

自分の戸籍抄本を取りよせる機会があった。

【名】久美子

【生年月日】昭和35年8月19日

【父】池上喜壽雄

【母】池上桂子

【続柄】長女

という部分に、

私は泣けて泣けて仕方なかった。

 

久しぶりに両親並んだ名前を目にし、

二人とのさまざまな思い出が

頭の中に出てきては上書きされる。

あ〜私はこの二人の子どもなんだ!

その誇らしさみたいなものが、

体中に染み渡る感じで、

親に対してそういう気持ちを持てることは、

本当に幸運なことだと考えた。

 

そして、

会いたいなあ 

と思った。

 

 

この小説の中に

主人公が亡くなる前の夢に

幼い頃に亡くなった母親が

出てくる場面がある。

 

夢の中で主人公と母親は

さんざん語り合った後、

こんな会話をする。

 

「私ね、まだもう少しだけ

 こっちにいたいんだけど、

 その時が来たら、

 ちゃんと私を迎えに来てくれる?」

「もちろんじゃない!」

彼女が即答する。

「だってそのためにお母さんは

 先に天国に行ったんだから」

 

戸籍抄本の後だったからか、

この部分で涙がとまらなくなった。

 

あ〜そうか、

父も母も、

平均寿命まで生きてはくれなかったけど、

でも、

私のことを迎えてくれるとしたら、

それはもう、全く、全然OKだという、

ものすごく暖かい納得感で

満たされてしまったようだ。

 

 

「死」を、

「大切な誰かを迎えるため」と捉えるというのは、

今まで聞いたことがなかった、新しい考え方だ。

 

 

小川糸さんの、

「読んだ人が、

 少しでも死ぬのが怖くなくなるような物語を書きたい」

という意図以上に、

私にとっては

口にはあまり出さなかったが、

「なぜ二人とも早くに亡くなってしまったの!」

という問いに、新しい解が提案された。

 

「両親と私」というジグソーパズルの

大切な1ピースが埋まった気がする。

 

 

それで私は今日のところの最後に食べたいおやつは、

牛乳カンなんだな。

(追記

 いかりや長介さんが

 きっと

 迎えに来てくれてる!)

 

 

 

 

 

「とめどなく囁く」

桐野夏生の小説の登場人物たちは、

いつもあまりにも苦く、じめっとした感じで、

今回も、

万が一実際出会ったとしても、

友達になりたいとは望まないと思う。

それなのに、なぜ彼女の小説に惹かれるかというと、

自分の中にもある

毒々しい、いやらしさみたいなものを、

ちゃんと見せてくれるからだと思う。

 

海釣りに出かけた夫が事故で行方不明になり

遺体が上がらないまま死亡認定された妻が主人公。

彼女は、前妻を病気で亡くした

大金持ちの男性と再婚する。

彼は31歳も年上。

ある日、前夫の義母から、前夫を見かけたと。

そこから彼女の生活が変わっていく。

 

今回は、

これきっと伏線だなと

想像したエピソードが肩透かし、、、

ということが結構あり、

じゃ、なんであそこまで丁寧に描いたの?と

桐野作品としては、私はやや不満。

最後の真実がわかる場面で、

読んできたことすべてが納得できるような

つながりがあれば、

きっともっとすっきりした読後感だったかも。

 

とはいえ、

やっぱいい。

不満はあるけどいいのは、

自分の中のエゴやずるさを、

ちゃんとある!と確認できるから。

いい人ぶったって、

私って、所詮、

彼女の小説に出てくる目を覆いたくなるような

登場人物たちの心のつぶやきを

ちゃんと理解出来ちゃうんだもんね。

そのことを忘れないで自分でちゃんと認めていようと、

結局今回も思えた。

 

桐野初心者の方にはオススメしないけど、

何冊か体験してる方は、楽しめるんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

私が中学校で活動を開始した時に

中学3年生だった方と会った。

彼が、

「いつか謝ろうと思ってたことがある」と言う。

さらに、

「谷澤先生、あの時いくつでした?」と聞くので、

「37歳だよ。

 ちょうど今のあなたと一緒だね」

と答える。

すると

「今だからわかるけど、

 ダメなこと言ってしまったんですよ。

 中学校の時に、一緒に食事した時、

 自分、谷澤先生に『子どもいますか?」

 ってきいてしまった。

 あの時、先生は、

 シャツにすっごく汗かいていて、

 それを自分、覚えてる。

 あれはまずかったと思う。

 そのことをいつか謝りたいと思ってた」と。

「え〜〜〜〜!

 そういう風に思っててくれたんだ」

私はびっくりした。

そして気持ちがとってもとっても

温かくなった。

 

一緒に食事したというのは、

給食だ。

当時教頭先生が、

ちょっとでも中学生に慣れるようにと、

活動日に毎回、各クラスで給食を食べる

スケジュールを組んでくれていた。

彼のクラスで彼の班に入れてもらって食事した時、

多分、その時が初回で、

すごく緊張していたと思う。

しかも、

教育相談員の事業がスタートしたのは、9月。

まだ暑く、もちろん空調などなく、

私は汗っかきだ。

そして

私はその頃もう、子どもがないことについて

整理がついていた。

不妊治療を2年間し、

夫婦での話し合いを経て、

「子どもがない人生」を選択した後だった。

だから多分、その汗は、

緊張と体温調節の汗だったと思う。

 

そのことを話し、

謝ってもらう必要はないことを言い、

 

なんだけど、

22年間、

彼が心のどこかで

そのことを持っていてくれたことが

もったいないほどありがたかった。

 

その後、いろいろな思い出話しをして

私たちは笑った。

笑いながら、

彼のその「いつか謝りたかった」

って言葉を思うと、泣きそうだった。

 

小説と小説の合間に、

そんな素敵な

小説みたいな日常の一コマもある。

 

 

 

 

 

 

 

「傲慢と善良」は期待通りの小説。

 

失踪した婚約者のそれまでの人生をたどることで、

彼女に起こった出来事から彼女の考え方を想像し、

照らしあわせて自分を振り返る主人公。

失踪したもう一人の主人公は、

それまでの関係を一切持たない環境で、

誰かの期待に応えるのでもなく、

「こうすべき」「こうすべきじゃない」で

判断するのでもない、

自分がどうしたいのか考えて選択する体験を重ねる。

その二人が再会し、二人で「これから」を決定していく

大恋愛の物語。

 

♪会えない時間が♪

育てたのは、

「愛」だけじゃなくって、

「お互い自身」。

 

 

婚活する年代の子どもを持つ親の方は、

この本を読みながら、

自分は子どもに

「善良」や「こうすべき」を押し付けてないだろうかと、

多分、少し怖くなるかもしれない。

婚活中の方は、

自分は本当に自分の意思で

いろいろ決めているのだろうかと

ちょっと考えてしまうかもしれない。

そしてこの物語の中に、

親も子も、

そこから抜け出すヒントを見つけると思う。

 

それは失踪しなくてもできる。

失踪した人を突き詰めなくてもできる。

日常の中で、

ちゃんとできる。

 

自分で考えて、考えた中から選び、行動し、

行動した結果については自分で責任を持つこと。

その繰り返しなんだよなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

author : tanizawa-k
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【2020.06.05 Friday 09:04
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谷澤 久美子
counselor